俺様外科医との甘い攻防戦

「これ、ありがとうございました。とても参考になりました」

「そう。良かった。でも受け取らないよ」

「はい?」

 意味がわからなくて、それこそ穴が空きそうになるほどに見つめる。

「そんなに見つめないでくれよ。照れる」

 うそぶく久城先生が憎たらしい。

「そういうのいいんで。手ぶらで返すのが無作法というのでしたら、後日なにか差し入れさせていただきます」

「それなら付き合ってよ」

「ですから!」

 長い脚を優雅に組み直し、私を真っ直ぐに見据えて言う。

「医師が嫌いだから? 気に入らないな。医師で一括りにされるのは」

 医師、ただそれだけで嫌いというわけじゃない。
 医師でその上眉目秀麗で、なにもかもを兼ね備えている……つまり女性をはべらかしていようとも、許されてしまう人種が嫌いなのだ。
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