俺様外科医との甘い攻防戦

「だから、それは」

「いいから食べよう。貴重な空き時間が無くなる」

 当たり前に言われた言葉に引っ掛かりを覚え、聞き返す。

「貴重な、空き時間、というのは」

「最近、手術が立て込んでて、いい加減休みをくださいって直談判の上の休暇」

 これには目を白黒させ、メニューを閉じる。

「それなら尚のこと、お休みください。連続勤務の上、当直をなさってて倒れないかと……」

「心配してくれてる?」

 目を細められ口元を緩めて聞かれると否定したくなるが、心配しているのは嘘じゃない。

「それに、俺の状況を把握してくれているのは、愛?」

 口の端を上げる久城先生にうんざりして、言葉が乱暴になる。

「いい加減にしてください! 患者さんの主治医の勤務体系を知るのは仕事柄、必要だからです!」

 噛み付くように前のめりになりかけた体に大きな手が伸びて、頭を撫でる。

「わかったから。真面目に返すからかわいくて、からかい過ぎた。奥村さんが脇目も降らず懸命に仕事しているのは知っているから」
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