俺様外科医との甘い攻防戦

 強制連行ということは、ベリーヒルズビレッジの噂の超高級レジデンスが久城先生のご自宅……。

 運転手に断りを入れた通り、タクシーは目的地にすぐに到着した。

 ここでまた「降りない。行かない」とだだをこねれば、運転手に迷惑をかける。

 導かれるまま、手を引かれ抱きかかえられるまま、タクシーを降りた。
 恥ずかしいやら、情けないやらで、久城先生の肩に顔を埋める。

「やけに大人しいな。安心しろ。怪我人をどうこうするほど、人でなしじゃない」

 意見する気力も起きず、黙りこくる。
 そのまま軽々と私をかかえ、オートロックもエレベーターも悠々と操作している。

 扉を開け玄関に入り、そのまま部屋を突き進むと、ソファの上にふんわりと下された。

「陽葵」

 見つめられると目が離せなかった。
 避けようと思えば避けられた。
 それなのに、体はいうことをきかなかった。

 ゆっくりと唇は触れ、それからおでこを擦り付けられ両手が頬を覆う。

「ごめん。俺のせいで怪我をさせた」

 胸を切なくさせる声が、心を揺さぶる。
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