俺様外科医との甘い攻防戦

「ところでストッキングは脱がした方がいいのか?」

「あ、いえ自分で脱げます。あの、後ろ、向いてもらってもいいですか?」

 久城先生が背を向けたのを確認してから、スカートをたくし上げる。
 捻った左足を極力動かさないようにして、ストッキングを脱ぐ。

 見られていないとわかっているのに、目の前の大きな背中に緊張して、脱ぐのに時間がかかってしまった。

 脱いだストッキングはギュッとバッグにねじ込んでから「もう振り返っていただいても大丈夫です」と声をかける。

 久城先生は私の座る隣のソファに腰掛けると、足を持ち上げ、自分の方へ引き寄せる。
 怯みそうになる前に「身を委ねてくれた方が処置しやすい」と釘を刺され、心を無にするように努めた。

 足は久城先生の腿の上に置かれ、申し訳なく思う暇もないほどに手際よく湿布が巻かれ、テープで固定されていく。

「テーピングお上手ですね」

 医師に『お上手ですね』もないだろうけど、久城先生は整形外科医というわけではない。

「研修医では一通りの診療科を回るからな。さあ、できた。ほら、つかまって」
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