俺様外科医との甘い攻防戦
顔を見上げられ、色っぽい眼差しと視線が絡む。
今まで事務的に運んでくれていたのだと気付いても、もう遅い。
妖艶な笑みを浮かべ、とんでもない台詞を口にする。
「陽葵が少し俺に顔を近づければ、キスできる。ほら。顔、近づけて」
「ち、近づけません!」
カッと頬が熱くなり、この場から逃げ出したいのに、抱き上げている腕は力強くて敵わない。
「ハハッ。からかいたくなるから困る。陽葵はなにを話してもかわいいから話すの禁止」
そう言うと、抱き上げたまま部屋を移動する。
間接照明の淡い明かりを感じたところで、再び下された。
そして動揺する暇を与えられずに、テキパキと私に処置を施していく。
かかとからふくらはぎ辺りまでのところにクッションかなにかを置かれ、頭より高くされた。
「大きな腫れはなかったから、捻挫は軽いもののようだ。それでも安静が一番だ。このままで」
仰向けでもここが寝室で、ベッドのサイズがとても大きいのだとわかる。
「俺はシャワー浴びてくる。陽葵はメイクを落としたいだろ? 頼んでおくよ」
「頼んでおく?」
「ああ、ここコンシェルジュ付きだから」
サラリと高級感を漂わせ、久城先生は寝室を出て行った。