俺様外科医との甘い攻防戦

「とりあえず、お手洗いに連れて行こうか」

 これには面食らい、丁重にお断りをする。

「そこまでしていただかなくても……」

「ダメだ。せめてここにいる間だけでも」

 久城先生の意見に押され、私は抱き上げられた状態で寝室を出た。

 もう大丈夫ですからと、意見するだけ無駄だと悟り久城先生に身を任せる。

 入浴の介助だけはどうにか免れたようで、洗面所で解放される。

「トイレはこの扉、奥の扉はバスルーム。それとこれ。着替えが入っているから使うといい」

 紙袋を渡され、なんとなく中身を見れずに受け取る。

 昔の彼女の服を平気で貸せる人なのかな。と、心に引っかかりを覚えつつも、なにか言えた義理じゃない。

「トイレは別にもあるから、気にせずゆっくりして」と言われ、こんなに高級で広いマンションならそれはそうか、と変に納得をした。
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