俺様外科医との甘い攻防戦

「くれぐれも足に注意して入ること」と過保護なくらいに釘を刺し、久城先生は洗面所を出て行く。

 とりあえずトイレに入ろうと足に注意しながら移動する。そして、出てきた先の鏡を見て、叫び声を上げる羽目になった。

「えっ。えぇー‼︎」

 声に呼応するように、駆けてくる足音。

「どうした。大丈夫か⁉︎」

 扉こそ開きはしないが、叫び声を聞きつけた久城先生がノックする。

「か、顔がっ」

「顔?」

「どうして私、スッピンなんですか⁉︎」

 ぼーっと鏡に焦点を合わせ、メイクしたまま寝ちゃったなあと、反省したところで顔の異変に気がついた。

 メイクは綺麗に落とされていた。

「ああ。なんだ。そんなことか。メイクは落として寝ないとダメだって、よく聞くから。落としておいた」

 なんだ。そんなことか。
 じゃないでしょう。
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