俺様外科医との甘い攻防戦

 化粧の剥げたドロドロの顔を晒し続けた方がマシだったのか、スッピンを見られた方がマシなのか、難しい問題ではあるが今はそこじゃない。

「紙袋の中にケアに必要そうなものも入れてあるから、使うといい」

 大した問題じゃないと思ったのか、スリッパの音が遠ざかって行く。
 病院でも音の鳴るサンダルを履いていてくれればいいのにと、今はどうでもいい考えが頭を巡る。

 無意識に視界に入れないようにしていた紙袋の中を覗くと、ビニールの簡易的なケースの中にはメイク落としや化粧水、乳液などが入ったお泊りセット。

 それとは別に、封の開いた拭き取るタイプのメイク落とし。

 これは想像していた昔の彼女が置いて行ったものではなく、コンビニで買ってきてくれたものだとわかる。

 そして洋服も値段の部分は切られてはいるが、タグはついたままの真新しいもの。
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