俺様外科医との甘い攻防戦

 シャワーを済ませ、今はダイニングテーブルに腰掛けている。

 さすがに洗面所の前で待ち構えてはいなかったため、念押しされた手前、一応壁伝えに片足で移動していると、「呼べばいいだろう?」と久城先生が歩み寄り、手を貸してくれた。

 そしてダイニングテーブルには素敵な朝食。具がはみ出そうなサンドウィッチにスープにサラダが置かれている。

「普段、朝は食べない上に、ほぼ外食なんだ」

「でしたら、これは……」

 状況と会話が噛み合わず、首を捻る。

「昨晩、呼び出しのついでに、デリバリーした」

 言われてみれば、スープカップは使い捨ての容器だ。
 温め直してくれたのだろう。湯気が立ち、おいしそうな匂いを漂わせる。

「ここまでしていただくのは、申し訳ないです」

 洗面所で紙袋の中身には笑ってしまったけれど、あまりにも過剰ではないだろうか。

「そう思うのなら、と言いたいところだが、昨日の怪我は俺のせいだ。この程度は素直に甘えてほしい」

 そう思うのなら、俺と付き合って。
 続きそうな言葉を心の中で補っても、上手く答えられる気がしない。
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