俺様外科医との甘い攻防戦

「そうか。俺は1日は休めなかった。午後からは病院に行く。陽葵は休みだろう?」

 手を差し出され、その手につかまり立ち上がる。
 固定された足は痛みもなく、歩けそうだ。

「はい。でも私、今日はお休みって、久城先生にお話ししましたか?」

 あまりに側にいたから忘れていた。
 自分に課した標語『イケメン医師、至近距離での直視禁止!』を。

 見上げた先で目が合って、まるで抱き合う恋人が見つめ合う構図になってしまっていた。

 向けられる甘い雰囲気に戸惑う。

「陽葵」

「は、はいっ!」

「今日は受け取ってもらえる?」

「な、なにをですか?」

 絡んだ視線をなんとか逸らすと、大きな体に包み込まれるように腕を回される。
 抱き合うように、ではなく、本当に抱き合う状態になって動揺する。

 ご丁寧に大きな体は屈められ、余計に顔が近い。

 耳に唇を寄せるのを感じ、体を固くさせる。

「ここのカードキー」

 耳元で囁くように言われ、全身が粟立つ。

「そんな、受け取れません」

「そう。まだ無理か」

 気落ちした声を聞き、胸が痛い。
 だからと言って、受け取るわけにはいかない。
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