俺様外科医との甘い攻防戦
私たちは、腰に手を回したままの恋人風を装って男性とは反対の方へと進む。
「あの、もう行ったんじゃないですか?」
「ん? ああ。邪魔は、してないよな?」
あんなに強引な救出劇だったのに、今さらの確認をされて吹き出しそうになる。
「ええ。はい。助かりました。名前すら、覚えていなかったので」
私の代わりに吹き出した久城先生が「さっきの人に、ちょっと同情するわ」と笑う。
さきほどの男性は、少し手が触れただけでも嫌だった。腕を掴まれてゾワッとした。
それなのに、久城先生は……。
無断で強引に触れてきているのは同じなのに、どうしてこんなにも違うのだろう。
久城先生の声を聞いて安心した。
抱き寄せられたぬくもりに肩の力が抜け、身を委ねている。
「陽葵の同僚の子、ちょっとやること乱暴だ」
ため息混じりに言われ、驚く。