俺様外科医との甘い攻防戦

「え? 歩美ですか? 歩美は悪くないんです。私を元気付けようとして、誘ってくれただけで」

 久城先生は片手で額を覆い、恨めしそうな視線を寄越す。

「病院のパソコンに『陽葵が気落ちしているので、合コンに誘いました。陽葵かわいいので、お持ち帰りされたらすみません』って業務メールに紛れて送られてきていた。ご丁寧に店の地図付きで」

「えっ、うそ。なんで」

 額を覆っていた手で頭をかき回され、「ったく。俺がどれだけ焦ったか」とぼやかれる。

「ご心配、いただかなくても、帰るところで」

 カタコトになりながらも顔が熱い。

「連れて行かれそうだったくせに、よく言うよ」

 文句を言われても、思考が追いつかない。

 本当に、心配して来てくれた、の?
< 79 / 165 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop