俺様外科医との甘い攻防戦
「いい加減、俺と付き合おう」
どういう脈略。
突然の提案に、言葉が出てこない。
「陽葵は捕まえておかないと、心配になる」
包まれている手を優しく撫でられ、すごく愛されていると錯覚しそうになる。
「だから私、医師は嫌だと……」
「遊んでいそうだからとかだろ? 俺は大切にする」
言葉だけなら、なんとでも言える。
ときめきそうになる心を無視して首を横に振ると、久城先生は片手を離し、指を三本私の前に立たせて見せた。
「試してみずに判断を下すのは、時期尚早だろ。せめて三ヶ月付き合ってくれ。それで落ちなかったら、俺も諦めるから」
そこまで食い下がるのはどうしてか。
わからないけれど、確かに試してからでも遅くないかもしれない。
久城先生を人として尊敬しているし、何度も助けてもらっている。
仮の彼女になったとしても、久城先生なら酷い扱いは受けないだろう。
例えもし、私が思い描いた通りの女性にだらしない医師だとしたら、「それ見たことか」と鬼の首を取ったように言うこともできる。
私は決意して、小さく頷いた。