俺様外科医との甘い攻防戦

 私が頷いたのを見ると、久城先生は脱力して肩に頭を預けた。
 想像よりも柔らかな髪が、首に触れてくすぐったい。

「やっとだ。そしたら、これ持ってて。三ヶ月の間はここに帰ること」

 体を離した久城先生は、なにかを手にして私の正面に立ち、無理やりにその『なにか』を握らされる。
 手の中には、いつの日か渡されたカードキー。

「だから、これは受け取れません!」

 慌てて押し返すと、久城先生に見つめられる。
 その眼差しにまっすぐ射抜かれ、目が逸らせない。

「受け取らないとフェアじゃない。俺、忙しいから、ここにいてくれないと陽葵との時間が作れない」

 少し傾げられた顔がゆっくりと近づき、唇が重なりそうになるのがわかる。
 咄嗟に両手を伸ばし、久城先生の口元を覆う。

「わかりましたから、キスで言うことを聞かせようとするのは、ずるいです」

「バレたか」

 目の前で破顔して、その表情の変化に胸が締め付けられる。
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