俺様外科医との甘い攻防戦
すれ違う想い

 あの日以来、時間さえ合えば寝室を共にした。
 少々危うい関係ではあるが、抱き枕になる程度で免れている。

 避けているのか、たまたまそうならないのか、手術後に一緒に寝る機会はないから、無事なのかもしれない。

 そうこうしているうちに、とうとう手術見学の日になり、私はみんなより早く帰った。
 悩みに悩んだ末、見学は申し込まなかった。

 手術は午後一時からで、見学をするのは若手の作業療法士や理学療法士たち。
 私ももしかしたら見学をするかもと、リハビリの予定をズラしたのは徒労に終わる。

 そのために空いた午後からの時間。半休をもらい、早めに帰ったのだ。

 帰ったのは、居候している久城先生のマンション。
 自分の一人暮らしのマンションに帰れば良かったかな。
 今日ほど、この身の丈に合わない豪華な住まいが惨めに思える日はない。

 寝室でシーツを被り、丸まって横になる。

 情けなくて涙が滲みそうになっていると、「やっと見つけた」と、安堵した声を聞いた。
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