俺様外科医との甘い攻防戦

「陽葵は頑張っているよ。仕事は血を見ることだけじゃない。陽葵は陽葵ができる仕事を懸命にしている。それを見てる人間はいるんだ。もっと誇りを持った方がいい」

 低く体に直接響くような声は、今の私には毒だ。
 この優しさに縋ってしまいたくなる。

「久城先生、お仕事があるんじゃ」

「俺、結構いい話したと思うけど?」

 ククッと喉で笑う久城先生は、もう一度、シーツにキスをする。

「シーツから顔を出した陽葵の顔を見たら、戻ろうかな」

「それは、できません」

「なら、俺も戻れないな」

 そんな横暴な。
 そう訴えても、久城先生は本当に戻らないだろう。

 おずおずとシーツをめくり、顔だけ外に出す。

 久城先生は顔に貼りついた髪を後ろに流しながら「陽葵の髪を下ろしている姿ってグッとくるよな」と、冗談めかして言う。
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