俺様外科医との甘い攻防戦

 おでこに手を当てながら、よろよろと寝室に向かう。

 ほどなくして寝室に現れた久城先生は、髪から滴を落とし、直視できないほど色っぽい。

「か、髪を乾かさないと、風邪をひきます」

「いいよ。面倒」

「ダメです。ドライヤー持ってきますね」

「いいから。抱かせて」

 すごい意味に取れ兼ねない単語も、意味通り抱き締めるだけ。

「他人のぬくもりを感じると、安心できるだろ? 陽葵ももう少し眠った方がいい」

 今日は前とは逆で、私が久城先生の胸元に顔を埋めて目を閉じる。

『他人のぬくもりを感じると、安心できる』
 このことを、どこで知ったんだろう。どこで、誰のおかげで。

 不毛な考えが浮かびそうになって、ギュッとしがみつく。

「ん? どうした?」

 優しい丸い声は、トクンと私の胸に温かな音を立てる。

 どうしよう。私、久城先生が好きだ。

 やっと認めた感情は、きっとずっと好意を持っていた自分の気持ちにしっくりと馴染む。

「少し、くっつきたくなって」

「ハハ。ご自由にどうぞ」

 今は心地いい眠りに誘われ、まどろんでいく思考に身を委ねた。
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