俺様外科医との甘い攻防戦

 寝室を出ていく久城先生は、病院にすぐ向かうだろう。
 私は慌てて後を追いかけて、「ちょっと待ってください」と声をかける。

「どうした? そろそろ着替えて行かないと間に合わない」

「それは私も同じです」

 キッチンに行き、冷蔵庫から昨日作っておいたサンドウィッチを取り出して久城先生に渡す。

 前にサンドウィッチを用意してくれたことがあったから、きっと好きなのだろうと思ったのだ。

「迷惑かとも思ったんですが、パッと見、買ってきたサンドウィッチ風に包んだので。サンドウィッチなら、つまみやすいと思いますし」

 出過ぎた真似だったかもしれない。
 気弱になり、だんだんと語尾が消えていく。

 そっと見上げて久城先生の様子を伺うと、固まっている。

「ご、ごめんなさい! 気持ち悪いですよね。人の作ったお弁当とかって」

 ほぼすれ違いとは言え、一緒に暮らしてみて、久城先生は綺麗好きだとわかる。
 仕事に行くと、午前中に清掃を頼んでいるようだが、それだけではなく室内は常に整っている。
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