プールのあとはお腹が減る。
私は悠介を止める。

ここで争ったら、何もかもおしまいな気がした。

「おい隼人っ! 俺は全部知ってんだぞ!」

悠介が怒りに任せて叫ぶ。その殺気に、私は動けなかった。

「あそこの祠は、一人のおばあさんが所有する土地だった! 学校でも“念仏ババア”ってあだ名がついてたあの人だ!」

知ってる。たしか毎日のように慰霊碑の祠の前で念仏を唱えていた人だ。

1ヶ月くらい前から行方不明になってる。

「遊園地のアトラクションの建設にはあの土地が必要だった! だが、念仏ババアはいくらつまれても土地を売ろうとしない。だからおまえの親父は…」

隼人君はナイフをかざし、悠介に突進する。

しかしそれを、健二君が渾身の力で止める。

「親父が殺した! そう言いたいのか!? 違う! 親父は殺ってないっ!」
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