プールのあとはお腹が減る。
私は悠介に抱きついた。

「悠介、嫌だよ! こんなところでお別れしたくない!」

悠介は私を抱き締める。二人のほほには、涙が伝う。

「お別れじゃない。また必ず会えるから。俺はまだ、環に言ってないことがたくさんある」
「私も、いっぱい…」

二人の目線がかち合うと、同時に同じ言葉を発した。

それはお互いに思いがけない言葉だったみたいで、一瞬だけ、時間が止まるような感覚がした。

「なんで? 環は健二のこと?」
「悠介だって、夏実のこと?」

少し間があって、悠介は何かに勘づいたように微笑んだ。

「そっか。そうだったんだ。わりぃ。俺、小六のバレンタインの日から、最低なことしてた」

悠介はレバーを引く。門が開き、排水溝に水が流れる。

「最低なこと?」
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