プールのあとはお腹が減る。
いつの間に現れたのだろうか。

目の前で誰かが声をかける。

そいつの右手には夏実のスマホが握られていた。その指が画面を操作すると、着信音が止まった。

「夏実?」

その人は夏実にそっくりだった。一瞬、夏実と見間違えたほどだ。

でも、よく見たら顔つきや髪型が違う。服装も、どこか古くさいセーラー服だ。

「あなたが夏実のふりをして、電話をかけていたの?」

その人は静かにうなずく。

「私は川神千秋(かわかみちあき)」
「やっぱり夏実じゃないんだ」
「まぁ、似てるのは当然さ。こいつは…」と夏実の死体を指指す。

「私の孫だからね。それにあんたらには“念仏ババア”って言った方が分かるかもね」

驚きのあまり変な声が出そうになる。

「じゃあ、あなたが水難事故の生き残りで、隼人君に殺された……え? じゃあ、あなたも幽霊なの?」
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