プールのあとはお腹が減る。
千秋さんは激しく叩かれる扉の方を見る。

「だいぶ集まってきたね。早くここから逃げな。窓から出て、真っ直ぐ祠があった建設現場に向かうんだ。一分だけなら、私が足止めできる」

千秋さんからは夏実と同じ匂いがした。信頼できる、お姉さんのような雰囲気。

「ごめんなさい。千秋さん。私達はもっとあの祠を守って、水難事故で亡くなった生徒達を大切に扱うべきだった。それが長い年月と共に忘れてしまって、最後にはこんな事態に…」

私が言うと、千秋さんは微笑んだ。
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