お見合いから始まる極上御曹司の華麗なる結婚宣言

「少し一緒に歩きませんか？」

「あ、はい」

九条さんの提案にコクンとうなずき、ゆっくりと歩き出す。座って向き合いながら食事をするよりは、気持ちが楽だ。並んで歩きながらそう思った。私には九条さんに伝えなければいけない最大のミッションがある。それを面と向かって逃げ場がない状態で伝えるのは、さすがに気まずい。

庭師さんによって丁寧に手入れされた庭園を回りながら、いつ話を切り出そうかタイミングを計っていた。そんななか、一緒に歩いていて気がついた。九条さんが私の歩幅に合わせてゆっくりと歩いてくれていることに。

着物に草履という動き辛い私へのさりげない配慮。さすが名門九条家の御曹司だと感心してしまう。この人は女慣れしているしモテるだろうな、そんな風に思っていると、

「美月さん、あそこの四阿(あずまや)に軽い食事を用意したので行きましょう」

「え？　あ、はい」

九条さんのそんな提案に戸惑ったのは、私の中の計画が崩れてしまったからだ。