お見合いから始まる極上御曹司の華麗なる結婚宣言
歩きながら要件を伝えるつもりだったのに。一番避けたかった展開になってしまったではないか。

四阿に着くと、着物姿の女性スタッフの案内で九条さんと向かい合わせに座ることになった。つまりは私に逃げ場はない状況だ。さてさてどのタイミングで話を切り出そうか。

スタッフさんが運んできた緑茶のグラスを手に取る。ひとまず自分自身を落ち着かせるために一口飲んだ。

すぐに軽食が運ばれてきて、九条さんに促されてそれらを摘まみだした。生ハムとチーズとひと口野菜のピンチョスに、うにく巻き、一口手毬ずしにキャビアとサーモンとえびのカルパッチョ、そして抹茶づくしのデザート、軽食と言っても使われている食材は高価で盛り付けも彩り鮮やかで美しい。

「食が進んでいないようだが、あまりお腹が空いていなかったですか?」

「え?」

ピンチョスをひとつ摘んだだけで、他は手付かずのままの私に九条さんがそんなことを聞いてきた。緊張していてあまりお腹が空いていないのは事実だ。

だけどそれよりも、頭の中は例の件をいつ切り出そうか、そんな思いでいっぱいで箸が止まっていた。
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