お見合いから始まる極上御曹司の華麗なる結婚宣言

一瞬だけ薫さんが切なげな表情を見せた。だけどすぐにいつもみたいに意地悪な笑みを浮かべ、私の身体を解放してそのままソファーへと腰を下ろした。

なんだか非常に気まずい。ゆっくりとソファーから身体を起こして、隣に座る薫さんの様子を窺う。

怒らせてしまったんだろうか。拒絶したことで傷つけてしまっただろうか。頭の中をいろんな思いが駆け巡る。

「薫さん……ごめんなさい」

「なぜ謝る？」

薫さんの切なげな表情が頭から離れなくてそんな言葉を吐いた。考えてみれば薫さんだって男だ。一緒に暮らしていれば、そういう欲求があっても仕方がないこと。それを我慢させてしまっているのが申し訳ないとも思う。

私にはそれを受け入れるだけの覚悟はない。表向きは婚約者だが、気持ちに嘘はつけない。私は薫さんに恋愛感情はないのだから。

「……薫さんのそういう欲求に私は応えられません。それで薫さんに嫌な思いや我慢をさせているんじゃないかと思うと申し訳ないですし。もしもそういう欲求がおありならば、外でそれを満たしていただいて構いません。あと数ヶ月間も我慢させるのはこちらとしてもすごく悪い気が……」