お見合いから始まる極上御曹司の華麗なる結婚宣言
私はなんでこんなにも動揺しているのだろう。胸の高鳴りと同時に奥底に感じる意味も分からない痛みに表情が強張っていく。

見間違いであってほしいと思うが、あの容姿からすると、あれはきっと薫さんだ。急な用事とは仕事ではなく、女性と会うことだったらしい。しかもあんなに親密そうな関係の人と。

薫さんにとって長い出張生活から帰ってから一番に会いたかったのは私なんかじゃなくて、あの女性だったんだ。その事実を知って、妙な虚しさと悔しさが沸き上がってきた。

『他の人と関係を持っても構わない』と、薫さん本人に言ったのは紛れもなくこの私自身だ。それ対して薫さんは『美月以外いらない』と言ってくれたけれど、あれは私とのゲームに勝つためのパフォーマンスに過ぎないのに、私はそれに完全に踊らされてしまって嬉しいという感情さえ抱いてしまっていた。

でも冷静になって考えてみれば、薫さんのような眉目秀麗でパーフェクトな男性が私みたいな男性経験もない、面倒くさい女を相手にするわけがない。それに薫さんと私は愛し合っているわけでもなく、親が勝手に見合い話を決めて仕方なく一緒にいるだけ。

そう。偽りの関係であるのだから、相手がなにをしようが、誰を想っていようが干渉する権利なんかない。ないのにーー

心はなぜかいうことを効かない。明らかに私の中に渦巻くのは『嫉妬』という醜いかたまりだ。自分自身がこんなにも嫉妬深い人間だったことを突きつけられて正直戸惑ってしまう。
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