お見合いから始まる極上御曹司の華麗なる結婚宣言
ベッドから気怠い身体を起こし、ふーっと息を吐いた。そして部屋のカーテンを勢いよく開けてみる。そこには複雑な私の心とは対照的な、どこまでも澄み切った青い空が広がっていた。

「そろそろ準備を始めなくちゃ」

自分自身にそう言い聞かせるように動き出した。その日は珍しく両親が家にいて、一緒に朝食を食べた。きっと、これは見合いをする私への両親のせめてもの気遣いなのだろう。

朝食をささっと摘まんで、洗面所に向かい身支度を軽く整えてから紺色のシックなワンピースに袖を通した。そして、執事の倉本さんが運転する車に乗り込み、母とともに着物の着付けの予約をしている美容室へと向かう。

「素敵なお着物ですね」

美容師さんが母が持ち込んだ着物を見てニコリと笑う。水色と白地にピンクや黄色や赤の花があしらわれた可愛いらしい着物。これは私の二十歳の誕生日に母がプレゼントとしてくれたものだ。

私好みの色使いで大変気に入っていたが、まさかこんな形で着ることになるとは、夢にも思わなかった。
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