復讐目的で近づいた私をいくらで飼いますか?
復讐内容は真面目に考えた。
さすがに人殺しも放火もしたくない。だから一番私に被害が薄そうな方法で復讐を果たしたい。
そこで閃いたのがシンプルな復讐だった。
『惚れさせて残酷な振り方をする』
正当な理由で振れば、私に気概は何もない。
『失恋の痛みが一番辛い』という友達の言葉を思い出し、その辛さを新に感じさせてやろうと思った。幸い(というか都合がいいことに)婚約者だし、完璧に落としてから婚約を破棄してしまえば計り知れない苦悩を味わせられるだろう。
そのために『可愛い』『美しい』を追求し、良い女を目指して頑張ることで理想の容姿を手に入れた。
そして就活はもちろん、新の住むベリーヒルズビレッジで進めると決めた。
けれど金持ちばかりが集う複合タウンで金銭面的に生活することは困難だった。打ちひしがれた時、更に就活は上手くいかないというダブルパンチに頭を抱えていると…
「美しくて可愛くて…なんて私好み♡」
偶然、ママと出会った。
「……貧乏な人間にとって見た目なんて…ただのお飾りです。」
捻くれていた私は苦笑いしながら話す。
「そう? あなたのその美貌は私の職場では武器になるわよ。」
「………?」
「名乗るのを忘れていたわ。オフィスビルの56階にあるラウンジのママをしている鈴木明乃。よろしく」
そこでママにスカウトされて、晴れて新の働くオフィスビルの56階でラウンジレディとして働くことに決まった。
住処はママの家。給料も良くて、金銭面的不安もなく生活できる。高待遇だった。
これが私の今に至るまでのこと。