復讐目的で近づいた私をいくらで飼いますか?


「んっ…な、に?」


背後から私の右耳に優しく触れて、もう片方の手で上半身を抱きしめる。
擽ったさに目を細めると、今度は頸(うなじ)に這う唇にドキリとしてしまう。


「そんな格好で寝室に来てマッサージ…? 誘ってんの?」

「ちがっ…!」


振り返って否定しようとした私の唇を新は塞ぐ。


「んっ…」


不意打ちのキスに自分の中で膨れ上がる欲情。それに気づくと変に恥ずかしくなって、強い力で抱く新の片手を、私の両手で剥がそうと試みた。だが、その抵抗も虚しく…。

《……ちゅっ…ちゅく…》

ただただ口内を舌で蹂躪される。


「……息…くるし…」

「鼻で呼吸しろよ。……俺のに応えるように絡めて…」


それから私は言われた通りに舌を動かしてみた。側面を刺激されれば気持ち良いことを知り、新にお返しするように伸ばす。口蓋を舌先で擽る彼の真似をして、私も同じ動きをした。

そして、一つの疑問が脳裏をよぎる。

どうして従順に私は受け入れているんだろう。


「……んっ…あらたぁ…」

「ん…?」

「もぉ…むり…」


私はお手上げだった。
涙目になっている目尻に彼の唇が這うと…

久々に新は私の前で柔らかな笑みを溢した。


「…っ……お前…キャラ、ブレすぎ」

「………」


普段の愛想笑いよりも好きかもしれない。歯を見せて口角を上げて。
頬に帯びる熱に気付かれたくないのに、その笑顔に惹き寄せられるように私は彼の表情から視線が逸らせなくなった。


「……続き、してもいい?」


普段、ものすごく傲慢なくせに。こういう時に限って彼は私の意思を求めてくる。


「……いいよ…」


その言葉を皮切りに、新はひたすらに私のことを優しく抱いた。

その行為中、彼は気持ちよさそうに顔を歪めながら言うのだ。


「お前が思ってるよりも…俺…お前には素を見せてるよ…。」

「んっ…はぁっ…♡」


溢れる快楽の悲鳴の隙間。

耳元で囁く彼の声音は、何処までも甘かった。



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