復讐目的で近づいた私をいくらで飼いますか?
ベリーヒルズビレッジのオフィスビル56階に私の居場所はある。
間接照明に照らされた落ち着く雰囲気の中。身を委ねれば自然と心が安らぐ豪華なソファ。
グラスと氷の打つかる音、かすかに鼻をかすめるブランドものの香水の香り。
「弊社の新商品は、モニターから幾度となく感想を得ることで開発を進め…」
「御社の海外進出の件についてなのですが…」
異業種交流。
聞こえてくるのはお仕事の話ばかり。
(今日も頑張ろう)
お淑(しと)やかなネイビーのワンピースを身に纏って背筋よく堂々と歩く。緩く巻いた髪、ほんのりと存在感を主張するピアス、ヌーディベージュの口紅を唇にのせて…。
ーー完璧。
いつも通り。かわいい私。
「純連、今日の接客はより一層気合入れて頼むわよ。」
このラウンジにて一番偉い人。ルールを作り上げて私たちラウンジレディを雇うママは今日も美麗だ。
「純連にしか任せられないの。」
「私に?」
そんなにも気を張る必要がある相手なのだろうか。今までにママからこんな期待を持たれたことはなかったから無意識に身構えた。
けれど、同時にワクワクしている自分もいる。
(……お偉いさんかな?)
この予想が的中すれば、私の『目的』を成し遂げることに一歩近づくことができそう。
「名前は?」
「あなたもよく知ってる人よ。……あ、ほら、来た来た」
会話中、ラウンジ内に響(どよ)めきが起こった。ひとりの人物が登場したことにより、女性は感嘆の声を漏らし、男性は尊敬の念を混じらせつつもライバル視しているような視線を送る。
「………新…」