復讐目的で近づいた私をいくらで飼いますか?
レジデンスの最上階に着く。ここまでの会話は無言だった。
恥ずかしくて顔は上げられないし、緊張で汗がじんわりと滲む。
「……仕事は…?」
かろうじて出てきた言葉は質問だった。
「キリが良かったから午後から休みとった。」
「……あんなに昨日の夜も忙しそうだったのに…?」
「…………ごめん。嘘ついた。」
「純連のことが気がかりで…リスケした」
期待に胸が躍るような発言をしないで欲しい。
「……気がかりって何さ…」
「しっかり謝りたかった。颯汰との縁を切れ、なんて言ったの…あれは…」
「……?」
「その……」
新は伏し目がちに話す。口をモゴモゴとさせて、少しだけ顔が赤いようにも思える。
「………颯汰に嫉妬してた。元許婚だし、純連と仲良いし…。颯汰、純連のこと好きだし。」
「好き…なのかな…? 家族みたいに大切にしてくれてるだけだと思うけど…」
「お前って鈍感なのな」
苦笑いを浮かべて、新はリビングの方へと私の手を引いて進んでいく。
いつまで握ってるんだろう。
手汗が気になるし、心臓はずっとバクバクうるさくて。
これ以上の行為を既にしているのに、おかしな話だよね。
「………あのさ」
「………何…?」
新の言葉に耳を傾けようとした時、手首を勢いよく引かれた。
唇に柔らかい感触と自分のものではない体温を感じる。
『キスされた』と認識するまでに数秒。
頭の中は真っ白で、呼吸をすることを忘れた。
「っ…! な、なに…いきなり…」
「ふっ…」
クスクスと笑って私の表情を見つめる。そしてもう一度私の唇を奪った。
「……やっと俺のことが好きって顔になった」
嬉しそうに笑うから、
「………新も…私のこと好きって顔してる…」
今度は私から唇を重ねて、柔らかく見つめ合った。