本当にそれでいいですか?
「は、当たり前だろ。俺はお前と別れて莉奈と新しい生活をおくりたいんだよ」
何を今更と馬鹿にした口調を飛ばされた。
フンと鼻息を吐き、心底見下した言い方だ。
「分かりました。じゃあこの離婚が成立したら金輪際私と彩佳に近付いたり関わるのはやめてくださいね。今日限りで縁を切ると」
「馬鹿か。それはこっちのセリフだ!お前の方こそ未練がましく今後俺に会いに来るなよ」
シーンと静まり返り、私は静かに頷いた。
「それではこれで契約成立ですね」
全てを書き終え私は離婚届けを2人の前に差し出した。これで終わり。ようやく全てが終わりを告げた。
「それでは今までご苦労様でした」
ありがとうと言わなかったのはこの男に今まで感謝することなんて一つもされた覚えがないから。むしろごご苦労様と告げたのは自分へのけじめ、労いだ。
「あ、ありがとうございます」
途端元気になった不倫相手が私に会釈をし、そして何を思ったのか空気の読めない大胆発言をし始める。
「あの、奥さんって聞いてた通り本当お人よし…、いや、いい人なんですね。でも助かりました。隆也さんは責任もって私が幸せにします」
勝ち誇った声だ。さっきの涙が嘘のよう。
まさに私の方が愛されてるのよと言いたげな顔。