本当にそれでいいですか?
「ば、馬鹿馬鹿しい!慰謝料なんてふざけるな!」
「誰もふざけてなどおりません。真剣です。何も間違ったことは言っておりませんよ」
「なんだとっ…」
「それと、今更嘘や誤魔化しはきかないのであらかじめご了承下さい。今までの会話は全て監視カメラで録画し、隣の部屋で実際に私共もお話の内容は聞いておりましたので。それ以外にも証拠はすべて揃っております」
「だ、誰の許可でそんなこと!」
「奥様の許可です」
「っ…」
信じられないといった顔を向けられた。
頭に血が上り何か言いたそうにしていたが、あえて視線は合わせなかった。
「まさか、お前がそこまで…」
「本当、自分の息子ながら情けない。お前には人の情とか思いやりがないのかい!ああ、情けない情けないっ…」
凄い剣幕でお義母さんが泣き崩れる。
私はということ、そんな光景に見かねて仕方なく哀れな視線を隆也の方へ。
「少しは自分がしたことの重みをちゃんと考えるきっかけになるといいわね」
隆也のことだ。きっと素直に慰謝料に応じないと予想はしていた。だから葛西さんと相談のもと観葉植物にカメラを仕掛けておいて正解だった。
この男のクズっぷりには本当にいやけがさす。
私はもう何も話す気になれず、荷造りしてあった荷物を自分の部屋に取りに行く。
するとほぼ同時だった。気を取り直したお義母さんが莉奈に向かって止めの一言を言い放ったのは。
「莉奈さんって言ったかしらね?あなたは人として未熟です。はっきり言って最低よ。正直学ばなきゃいけないことが沢山あるわ。それを私がこれから一から鍛え直してあげますから覚悟しておきなさい」
「そ、そんなっ…」
「当たり前です。隆也の嫁になるんですよ。中川家の恥になるようなことはこの先一切許しません!私が毎日その腑抜けた根性を叩き直し、更正させてあげます」