本当にそれでいいですか?
大逆転への道

そして月日が流れ3年がたった頃、偶然町中で別れた夫、隆也と妻の莉奈の姿を見かけた。

初めは素通りしようかと思ったが、一歩進んだところで思わず足を止めた。なぜならその二人、いや三人の姿が予想以上に酷いものだったから。

町中で大声で泣き叫ぶ子供はあの時お腹にいた二人の子供だろう。男の子だった。
そしてそれを見て暴言を吐いている隆也は見るからに悪態つく態度を向けている。


「おい、早く泣き止ませろや!周りに変な目で見られるだろ!こののろま!」

「のろまってっ…、なによ、だいたいこんな風になったのは貴方が聡太を強く叱るからでしょ!」

「こいつが悪いんだ。しつこくアイスが食べたいなんてほざいて駄々をこねやがって!」


酷い痴話喧嘩だった。見るからに醜いやり取りはあの3年前の茶番劇は何だったのかと思わせるほど。
周りの通行人も何事かとチラチラ見てる。

そんな姿を目の当たりにして思ったことは一つ。何も変わっていない。
この男は3年前のあの日から何一つ変わってはいないということ。


「あら、誰かと思ったら久しぶりね」


そんな状況に見かねた私はご丁寧に声をかけた。正直ほっとけばいいのだけど泣きわめいてる子供があまりに不憫であえて目の前の男の子にだけ笑顔を向けて話しかけることに。


「こんにちは。アイスはないけど美味しいチョコレートは持ってるわよ。よかったら食べる?」


子供の目線までしゃがんで鞄から箱を取り出した。たまたま頂き物のチョコレートがあった。
するとすぐ、頭上から「なっ」「え?」と予想どうりの声が飛んできた。当たり前の反応だがあえて返事はしない。軽く無視、だ。


「パパとママがアイス買ってくれないの?」

「…ぅん。買うお金がないんだって。お腹に赤ちゃんもいるし今節約中なんだって、だから…」

「ちょっ、聡太!」

「おい…っ」
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