本当にそれでいいですか?
「全てあなたが望んだことよ。あなた自信が決めたこと。それにあの時ね、私には見えたのよ。私はあなたと別れたら絶対に幸せになれるって」
「なっ…」
「莉奈さんだったかしらね?ずっとあなたにはお礼を言わなくちゃと思ってたのよ。感謝するわ。私からこの男を奪ってくれてありがとう。お陰で私は今最高に幸せなの」
「…っ……」
衝撃を受けた顔だった。
次第に華奢な肩がフルフルと震え出す。
この時彼女の顔から、いや全身からの初めて屈辱と後悔を見た気がした。
悔しそうに顔を歪め、そして自分のしたことの間違いにようやく気が付いた様子がしっかりと見てとれた。
「ね?だから言ったでしょ。この男に何も期待なんてしちゃダメだって。自分が惨めになるだけなのよ」
何一ついいことなんてなかった私が言うんだから間違っていない。
きっとこの男は変わらず何もしてくれてないのだろう。
その証拠にさっきの二人の言い合いが何もかもを物語っている。
「優しいのは最初だけだったでしょ」
「…っ……」
とうとう諦めたように口を閉ざしてしまった。
きっと図星だったのだろう。
隣の隆也も「お前…」と怒りをあらわにしてくるが、私は動じず茅の外だった男の子に再び目を向ける。
「もう泣かないでね。それと変な騒ぎになってごめんなさい。はいどうぞ、これチョコレート。おばちゃんは食べないから良かったら食べて。大丈夫、とっても美味しいから安心してね」