本当にそれでいいですか?

幸い隆也の姑の(はる)さんは優しかった。
いつも私と彩佳(あやか)のことを気にかけてくれて良くしてくれた。
隆也の変わりに何度も浮気のことを謝ってくれて、私の育て方が悪かったせいでと、涙してくれることも多々あった。

彩佳にも沢山の愛情を注いでくれた。
だから今まで悔しくてもやってこれたのだと思う。
両親を亡くした私にはまるで母親のように温かく大切な存在がいたからこそ踏ん張れた。

けれどそれも潮時が来たようだ。


「俺は愛する莉奈(りな)と産まれてくる子の側にいるって決めたんだ。悪いが此処にサインをしてくれ」

「それはつまり自分の不倫を認め、私や彩佳を捨てるということですか?」

「そうだ、俺はもう我慢をするのはやめた。これからは自分の気持ちに正直に生きるってな。そもそも最初からお前との結婚は間違いだったんだ。愛想も可愛いげもない娘なんかと一緒にいたって何一つ楽しかねぇしな」


つくづくアホですか。
最初からやりたい放題、本能だけで生きてきた男が今さら何をほざいてるのか。

彩佳がなつかないのは当たり前のこと。
家庭を省みず若い女の尻ばかりを追いかけてきた甲斐性のない父親になつく方がおかしいでしょ。
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