ONLY YOU～身代わり見合い結婚は履行で。クールな上司は過保護な旦那様～

帯の拘束感が苦しく、出て来る懐石料理には喉が通らず、お茶で空腹感を満たす。

「やはり…一人娘で…貴方は旅館の女将。いずれはお嬢様も女将の後を継がれるのですか？」

「いえ、それは…本人の意思に任せています」

「そうですか…徹也お前は先ほどから黙っているが…何か朝香さんに訊くコトはないのか？」

「別に…」
課長は頭取の言葉に素っ気なく返し、お吸い物を啜った。

「まぁ、てっちゃんも朝香さんの余りのキレイさに照れて言葉が出ないのよ…純也さん」

「母さん…てっちゃんは止めてくれ」

「いいじゃない…朝香さんも結婚したら、てっちゃんって呼んであげてね」

「あ、はい…」

三十路の課長は家ではてっちゃんか・・・

私は笑いを堪えるのに必死になってしまった。今にも大笑いしそうな勢い。

そんな私に鋭い視線を向ける課長。

「父さん、母さん…小林さん…朝香さんと二人で話がしたい…庭園を散策していいですか？」

「あ…そうだな…二人で話がしたいか…」

「ゴメンなさい…てっちゃん、気が利かなくて…」

「行きますよ…朝香さん・・・」