ONLY YOU~身代わり見合い結婚は履行で。クールな上司は過保護な旦那様~
「事情は分かった」

課長は瞳を潤ませ、今にも泣きそうな私にハンカチを差し出した。
「泣くな…折角のメイクが崩れるぞ。有村」

「ありがとう御座います」

私は彼のハンカチでそっと目尻の涙が拭く。
「あ…」

濃い目に引かれたアイラインでハンカチが汚れてしまった。

「すいません…ハンカチ汚してしまいました…」

「ハンカチ位、構わない。それよりも歩きづらそうだな…座るか?」

「え、あ」

慣れない振袖に足許は草履。
彼は私を気遣い、竹材で作られたベンチに腰を下ろした。

私も彼の隣に腰を下ろす。
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