第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
さすがに今読んでいた部分を伝えるわけにはいかない。アリシアは続きにざっと目を通して、最後の一文を読み上げた。
「『お土産待ってます。あたしは何かそちらの国らしい物が欲しいです。あと、ミハイルさんがローゼルティーとかいうハーブティーを欲しがっていました。旅行、楽しんでください。』……だそうよ」
読んでからこの部分を選んだことに後悔する。ここだけ読むと、まるでニーナがわざわざ旅先に手紙を送ってまで土産を要求する図々しい人みたいだ。案の定、ノアは苦い顔をしている。
「この国らしいお土産ねえ……何が良いと思う?」
アリシアはあえて明るく尋ねる。
「さあ。彼女へのお土産なら海で拾った貝殻とかで良いんじゃないですか?」
「それは流石に安上がりすぎよ……。だけどそうね、この国らしいものと言えば、やっぱり海関係のものが良さそうだわ」
「ミハイルさんの方は具体的なリクエストがございますが……」
「ローゼルティーね。グランリアでも買えるけど、確か輸入先はこの国だったわね。輸送費がない分安く買えるでしょうからわたしも欲しいわ」
「ローゼルというのはどのようなハーブなのですか?」
「ああ、ローゼルは……」
アリシアは生き生きした表情で解説しつつ、あの手紙は封筒に戻してこっそりしまった。