第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
「いや、それはないです」
「え?」
「だって、そんなものがあったら、あたしがこんなに苦労しているはずないでしょ?」
「あ……」
そうだ。彼女はこの世界をストーリー通りに進めるために色々と画策していた。もし強制力があるのなら、そのようなことをせずとも放っておけばいいのだ。
「殿下がアリシア様を妃に所望した理由はちゃんとあると思いますよ」
「そう、かしら」
「アリシア様が彼のことをどう思っていようが、彼の気持ちを知らないままでいようが、このまま次の春が来れば、お二人は夫婦になります。だけどそれって……ちょっと寂しくないですか?」
ニーナはふわり、と優しい笑みを浮かべる。
「アリシア様が自分の気持ちを知るのはすぐにってわけにいかないでしょうが、せめてイルヴィス殿下の気持ちは聞いておいた方が良いかもしれませんね」
そう言うと、彼女はティーカップを置いて立ち上がった。
「そろそろ戻ります。ごちそうさまでした」
「ええ、話を聞いてくれてありがとう。お仕事頑張って」
「はい!また恋バナしましょうね」
会釈し立ち去るニーナに手を振り見送る。
助言を貰えたし、気持ちも少し軽くなった。だが……
「疲れた……」
正直、彼女との恋バナはしばはく御免こうむりたい気がする。