第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II

12.ローゼルとハイビスカス




「いらっしゃい。おや、カイ王子じゃないか」



 カイに連れて来られたのは、シーグラスと貝殻を探していた海岸からすぐ近くの小さな建物だった。

 迷いなく中へ入っていくカイについて行くと、上品に笑う老女がいた。



「今日は女連れじゃないか。綺麗な娘さんだけど、あんたのガールフレンドかい?」


「はは、そうだったら良かったんだが残念ながら違う。彼女は隣の国から遊びに来たご令嬢でな。今この辺りを案内しているんだ」



 『カイ王子』と呼んでいたのだから、彼がこの国の王子であることは知っているはずなのに、この老女はずいぶんと無遠慮な物言いをする。



「あの、カイ様。ここは……?」


「まだ説明していなかったな。ここは……いや、見てもらった方が早いか」



 カイはそう言うと先ほど集めてきたシーグラスを取り出し、老女の前へ置いた。

 彼女はそれらを一つ一つじっと見つめ、手元から何かを取り出す。それは銀色の針金らしき物だった。

 道具を使って針金を曲げていき、網のような形にすると、白いシーグラスを包むようにして固定し、紐が通される。



「お嬢さん、こちらへ」



 老女に言われるがまま近づくと、彼女はそれをアリシアの首に掛けた。シーグラスのネックレスだ。


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