第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
「お邪魔します。うふふ、昔もイル様がいらっしゃった時はこうやってお部屋に遊びに来ていましたね。まあ、カイ兄様も一緒でしたけど」
「そうだったな」
「懐かしいですわ。あ、紅茶はここに置いてよろしいですわね」
そう言ってディアナは、ベッドのそばにあったテーブルに紅茶を載せたトレイを置いた。
窓の近くにあるテーブルにはソファーを向かい合わせで置いてあるのに対し、こちらのテーブルには椅子が一つしか置いてない。
何故こちらを選ぶと眉をひそめた。
「いや、窓際のテーブルに……」
「ふふ、細かいことは良いではないですか。冷めてしまう前に飲みましょう」
ディアナはイルヴィスの話を聞き入れようとせず、にこりと微笑んで椅子に腰を掛けた。
一つしかない椅子を使われ、イルヴィスは仕方なくベッドに座った。
「カーラに頼んで、少し珍しい紅茶を淹れてもらったんですの。スパイスのような香りがして、味もいつもの紅茶とは少し違います」
そっと匂いをかぐと、確かにツンと鼻を突くような強いスパイスの香りがする。
ゆっくり口に含んでみると、味の方もかなりスパイスか何かがきいた独特な味がする。