第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
そういえば、先程から何故か頭がぼんやりとしている。
それに身体も妙に熱い。紅茶に入ったスパイスのせいかと思ったが、果たしてここまで熱くなるものなのか。
じんわりと出てくる汗の量は次第に増えていっている感じがあり、手には上手く力が入らないような気がする。
(何なんだ……?)
乱雑にティーカップをテーブルへ置き、手を握ったり開いたりして動かしてみる。
「イル様?」
目の前のディアナがこちらをじっと見つめている。
その表情に、どこか違和感がある。
彼女はこんな風な目をしていただろうか。何故、そのように微笑を浮かべているのだ。
「ディアナ……」
一つの可能性に思い当たった。
シャツの袖で額に浮いた汗を拭い、熱い息を短く吐き出す。
普段ならば確証もないのにこんなことは言わないだろうが、このぼんやりとする頭では上手く考えられず、イルヴィスは考えた可能性をそのまま口にした。
「ディアナ……この、紅茶に、何を……混ぜた……?」