第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
その気になってくれたのか。
薬の効果といえど、嬉しい。心臓をドクドク高鳴らせながら、ディアナは次を期待してイルヴィスを見上げた。
しかし──
「えっ……わっ」
掴まれた手首は強い力で引き上げられ、ディアナは強制的にベッドから追い出される形で、冷たい床の上に立たされた。
「イル……様……?」
「出て行け」
「え……嫌ですっ。私……!」
「いいから出て行け。不快だ」
今まで聞いた事のないような荒々しい語気。
相変わらず苦しそうな呼吸をしているその口元を見ると、唇からじんわりと赤い血がにじみ出ている。唇を強く噛んだようだ。
自ら痛みを与えることで、媚薬の作用から意識を逸らしたらしい。
「そんなっ、お願い……」
「私が愛しているのはアリシアだけだ。あなたのことは、妹のようだと今まで可愛がってきたが……間違いだった、ようだな」
「ですけどっ!私はずっと……」
その言葉が続くなかった。
血で唇を紅く染め、ほの暗い光に当たるイルヴィスは、いつも以上に色香が増し、目が離せなくなるほどに美しい。
だが一方で、ディアナを見つめる緑色のその目はとても恐ろしかった。