第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II


『あなたのことは、妹のようだと今まで可愛がってきたが……』



 彼にとって、自分が妹のような存在に過ぎないことぐらい、知っている。知っていたけれど……。



「ああああああ‼」



 自室に戻ったディアナは、枕に顔をうずめて、思い切り叫んだ。


 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。



(どうしてこんなことになったのよ)



 そんなはずじゃなかった。

 彼に婚約者ができる前に、さっさと結婚を申し込めば良かったのだ。王女であり昔から馴染みのあるディアナなら、断られなかったに決まっている。

 父が認めてくれなかったから……。



(いえ、それよりも)



 アリシア・リアンノーズというあの令嬢。

 あの女さえいなければ。



「そうよ。あの女が悪いんだわ」



 ディアナは枕から顔を上げ、ぎゅっと唇を結ぶ。


『私、アリシアさんとは是非お友達になれたらなと思っておりますのよ』


 この前夕食の席で、ディアナは穏やかにそう言った。……イルヴィスには勘づかれていたようだったが、本心のはずがない。

 彼女がイルヴィスの婚約者であると知った瞬間から、憎くて憎くてたまらなかった。


 許さない。絶対に。


 ──コンコンと、部屋の戸が叩かれる音がした。


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