第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
「誰?」
鼻をすすりながら、ディアナは投げやりな声を上げる。答えたのは、馴染みの使用人だった。
ディアナが泣きながら部屋へ走っていくのを見て、様子を見に来たと言うのだ。
その使用人は、ディアナの顔を見て少し表情を固くし、それからあることを伝えた。
「そう。アリシアさんが戻ってきたの」
アリシアがしばらくこの国にいる知り合いの所へ行っていて、今晩戻ってくるという話は兄のカイから聞いていた。
彼女の名前を聞くだけで、カッと頭に血が上るような感覚がする。
(……そうですわ)
血の上ったディアナの頭に、とある計画が浮かんだ。
とてつもなく良い案のように思えるが、どうだろう。
ディアナは無意識に、今しがた考えついた計画を口にした。
「……ということなのですけど、あなたも、協力してくださいます?」
前にいる使用人の目をじっと見つめる。
その使用人は、しばらく思案するように黙り込んでいたが、やがてしっかりと頷いてディアナの目を見返してきた。
ディアナはその反応に満足して、薄く笑みを浮かべる。
(アリシアさん。私からイル様を取り上げたこと、絶対に……絶対に後悔させて差し上げるわ)