第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II



 リアンノーズ家で働く料理人が即席で作った、野菜と薄切りベーコンを挟んだだけのシンプルなサンドイッチ。

 そのサンドイッチが、次から次へと青年の口の中に消えていく。見ていて清々しいほどの食べっぷりだ。



 空腹を訴えるこの青年を、アリシアは連れて帰ってきてしまった。

 父にバレると小言を言われそうなので、庭先でこっそりと軽食を振舞っている。



「ああ美味い。こんなに美味しいサンドイッチは初めてだ」



 青年は皿に盛られたサンドイッチをたいらげると、そう言ってふっと息をついた。

 いつの間にか、蜂蜜色の瞳に覇気が戻っている。



「気に入ってもらえたようで良かったわ。あなたは旅の人?」



 アリシアはガラスのティーポットにお湯を注ぎながら尋ねる。



「その通りだ」


「おひとりで?」


「いや、連れがいたんだけどね。どうしても一人で街を観光したくて隙を見て逃げた」



 青年は悪びれる様子もなく言ってのける。



「なら、お連れ様は心配しているんじゃ?」


「問題ない。奴らも慣れているからな。どうせはぐれるんだからその時はここに来い、と場所を指定されているぐらいだからな」



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