第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
それは考えたところでわからなかったので、アリシアはとりあえず必死になって叫び助けを求めた。
しばらく待ってもディアナは戻ってくることはなく、アリシアの声が枯れかけた頃にようやく、イルヴィスの従者が気づいてくれた。
従者の手で部屋に運び込まれたイルヴィスを、アリシアは夢中で看病した。その時は、具合悪そうにうなされている彼がただただ心配で、他のことを考える余裕はなかったのだが……。
『貴女の手は少し冷たくて気持ち良いな』
目覚めた彼の体温を確認するために額に触れると、いきなり手をとられていたずらっぽく笑われた。
少し汗ばんだ肌、アリシアの手にサラリとかかる金色の髪。
すっかりいつもの余裕のある表情を取り戻した彼を見た瞬間、今度は自分が熱を出したのかと思うほどに顔が熱くなった。
(心臓に悪いわよもう……)
今までだって、こんな感じで触れられることがなかったわけではないはずだが、自分の気持ちを諸々と自覚してしまった状態では、無駄にドキドキしてしまう。
むしろ、彼はアリシアが自覚する前から既にアリシアの気持ちに気づいていて、その上でからかっているのではないかとさえ思えてくる始末だ。