第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
(まあ、さすがにそれはない……わよね)
大きな窓の近くまで来て、ゆっくり息を吐いた。
外を見ると、キラキラと輝く美しい海とよく晴れた青い空が眩しい。
(ていうか、少しでもこの気持ちを伝えようと思っていたはずなのに、結局逃げてるじゃない……)
少しばかり自己嫌悪にかられ、また短くため息をつく。
だが落ち込むのと同時に、今度は少しおかしくなってきた。こんな甘酸っぱい感情にくよくよ悩む日が、自分に来ようとは。
そうやって一人コロコロと表情を変えていると、背後から話しかけられた。
「あの、アリシア様……でしょうか」
アリシアの名を呼ぶためらいがちな声。
振り返ると、この城で働くメイドと思しき人物が立っていた。
「ええ、そうだけれど」
この城で働く人々は、皆ディアナが可愛いがためにアリシアへ敵意を抱いている……との話なので、アリシアは警戒しながら答える。
「ええと、ディアナ王女がアリシア様とお話がしたいと……」
「……え?」
「あの、それで、庭のハイビスカスが咲いているあたりに来て欲しいそうでございます……。それだけです。失礼します」