第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
だから問題はない。彼はそう笑うが、実際に空腹で倒れていたのだ。問題だらけではないか。
アリシアは苦笑いして青年にお茶を出す。
ティーポットをのぞき込んだ彼は、「おおっ!」と声を上げた。
「茶の中に花が浮かんでいる!」
アリシアが彼のために淹れたのは、「工芸茶」と呼ばれる、花を茶葉でくるんだ一風変わったお茶。お湯を注ぐことでゆっくり花が開く。
「近くの港で定期的に、外国からの輸入品を集めた市が開催されるのだけど、そこで買ったお茶なの」
気がついてもらえたことが嬉しくて、アリシアは上機嫌に答える。
「見ているだけでも楽しいでしょ?」
「ああ面白い!どこかの国ではこんな不思議な茶が作られているのか。俺もまだまだ世界を知らないらしい……!」
「ふふ、そう言ってもらえて嬉しいわ。せっかく旅行に来たのに、お腹を空かせて倒れた記憶だけになってしまったら悲しいもの。少しでも楽しい思い出に変える手伝いができたかしら?」
アリシアがそう微笑むと、青年はまじまじと顔を見つめてきた。……と思うと、彼は突然立ち上がり、アリシアの両手を取った。
いきなり何事かと、思わず後ずさる。